研究課題

大石グループ:「モデリングのための精度保証付き数値計算法の開発」

 「モデリングを困難にしている根源へのチャレンジ」,「モデリングのための精度保証付き数値計算理論の基盤構築」を遂行する.具体的には不確定性間の相関を利用した効率の良い演算法の開発・実装を行い,無誤差変換などの高精度計算を利用した行列の固有値問題,特異値問題,大規模スパース系に対する世界最高速の高精度数値計算法を開発する.さらに時間発展方程式の計算機援用解析法・力学系理論・3次元幾何学問題の微分幾何学的定式化に現れる非線形方程式の解法など数値解析にとどまらない広い観点から数学モデリングの信頼性に関連する未解決問題を解決していく.

荻田グループ:「無誤差変換法を用いた高速・高精度な数値線形代数アルゴリズムの開発」

 モデリングにおける悪条件性問題及び大規模性問題を克服するための研究を推進する.具体的には,本共同研究者らの提唱した無誤差変換法をベースに,悪条件あるいは大規模な線形問題(連立一次方程式,固有値問題,特異値問題等)に対する高精度かつ高効率な数値計算法を確立する.問題の悪条件性が高い場合や大規模性に起因する数値計算誤差の累積が大きい場合など,問題に応じた精度の制御方法について検討し,最終的に所望の精度を持った解を得られるようなアルゴリズムの体系を考案する.

山本グループ:「微分方程式に対する精度保証の開発」

 常微分方程式の精度保証技術の展開に基づき,既存の数理モデルにおいて厳密な数値検証に有用な技法,特に力学系に対する精度保証技術の提供・時間発展型偏微分方程式への実用面と理論面の双方における精度保証フロンティアを開拓する.具体的には,コンピュータプログラムのモジュール化や自動生成,多倍長演算との組み合わせによる高精度化などを通して実用的な精度保証ツールを開発する.

高橋グループ:「可積分系研究の厳密解析の展開」

 非線形可積分系・可解系の理論をベースに,数学的構造に着目した連続系の厳密な離散化手法を開発する.得られた差分方程式や超離散方程式・セルオートマトンに対して解の保証を与えるための数学理論を構築する.それら成果をもとに精度保証の新しい手法の開発を目論み,現実の数理モデルへ応用する.

渡部グループ:「非線形偏微分方程式に対する計算機援用証明」

 非線形発展方程式をはじめ,特に非線形偏微分方程式に対する未解決な計算機援用解析に取り組むことにより,既存の数理モデルを実証・検証するための数学理論・実装技術を確立する.また,得られた精度保証理論を可能な限り一般的な数理モデルに対して適用できるように整備・拡充する.さらに,研究推進の基礎に対して研究機関のハイパフォーマンスコンピュータにおいて実証するとともに,得られた知見をそれぞれの問題に帰還する.

小林グループ:「有限要素法の誤差評価と精度保証付き数値計算への応用」

 2次元および3次元の偏微分方程式に対し,有限要素法をベースにした精度保証付き数値計算について研究を行う.具体的には,有限要素上の補間誤差評価にもとづく誤差評価の精密化,リファインメントメッシュを用いた精度保証の高精度化などに取り組み,非線形楕円型方程式や流体方程式などの,3次元の偏微分方程式に対する精度保証付き数値計算の応用について研究を行い,これらの方程式の解の存在や一意性を,計算機を用いて厳密に証明する手法を確立する.

尾崎グループ:「線形計算に対する高精度かつ高速なアルゴリズムの開発とその応用」

 数値計算の分野で通常利用されるIEEE 754が定める浮動小数点数とその演算では,計算中の微小な誤差により結果を大きく変えてしまい,最終的に意味のない結果を得るという問題をかかえている.また計算が大規模であれば,よりこの問題は深刻になる.本プロジェクトでは浮動小数点演算を活かした高精度計算法を提案することにより,高速かつ高精度な計算アルゴリズムの開発を行う.計算結果とそのシャープな誤差を与える手法や,許容誤差を事前に決定し,それを厳密に満たす計算結果を出力するアルゴリズムを開発する.

山中グループ:「精度保証理論に基づく計算基盤技術の高性能化」

 近年,精度保証理論が発展し,様々な方程式の信頼性のある結果を計算できるようになるにつれ,特異点を含む関数や無限を含む積分などの,高精度かつ高信頼な結果を得にくい分野において,精度保証基盤技術の高性能化が求められている.ここでは精度保証理論に基づく計算基盤技術の高度な展開を目指す.高精度・高信頼・高可搬・高速な計算の体系的な構築法を考案し,従来高精度かつ高信頼な結果を得にくかった積分計算を含む関数の精度保証理論を確立する.